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個人事業主の節税の裏ワザを丁寧に解説します。また、「これがなぜ節税になるの?」という方向けに、節税の仕組みも図解しています。
個人事業主の節税の裏ワザ 経費編
個人事業主が経費にできるものをまとめています。「知っていれば経費で計上したのに!」はもったいないので、ぜひ参考にしてみてください。
1.自宅兼事務所は家賃や光熱費を「家事按分」で経費に
家事按分とは、個人事業主が家賃や光熱費などで払ったお金のうち、事業で使った割合で経費に計上する考え方のこと。
例えば、個人事業主Aさんが毎月家賃を10万円払っているとします。Aさんは自宅を事務所と兼ねていて、事業で使っている面積はだいたい30%くらい。ということは、10万円×30%=3万円を毎月経費に計上してOK。
同じように、以下の費用も事業で使っている割合を家事按分で経費に計上できます。
家事按分で事業分を経費に計上できる可能性があるもの
- 家賃
- 光熱費
- 通信費
- 自動車関連費
家事按分の考え方は面積以外にも、使っている時間、コンセントの数など合理的な説明ができればOKです。自動車なら、走った距離の割合などで自動車の減価償却費や保険料、ガソリン代、修理代、駐車場代なども経費になります。
個人事業主の方は普段からお金を支払う時には「これは経費かな?」という視点を持つと節税につながります。領収書をもらって保管しておくことも忘れずに対応しておきましょう。
家事按分については、以下の記事で解説していますので参考にしてください。
2.30万円未満の固定資産は一括で経費に
基本的には、10万円以上のものを購入すると固定資産として、耐用年数に応じて減価償却をする必要があります。
例えば、20万円のものを5年の定額法で減価償却する場合に経費にできるのは1年間で4万円。減価償却は経費にできるまで時間がかかるのです。
少額減価償却資産の特例を使うと、30万円未満の減価償却資産をその年分として全額経費にできるので、減価償却をして少しずつ経費にするよりも早く経費に計上できて節税になります。
少額減価償却資産の特例は2022年(令和4年)3月31日までとされていましたが、令和4年度税制改正で、2024年(令和6年)3月31日までと2年延長になりました。
なお、令和4年度税制改正では、即時償却や一括償却資産に該当する資産から「貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供した資産」は、対象外になりました。その場合は、通常の減価償却をすることになります。これは、主要な事業として行われるものを除くので、リース業やレンタル業の事業者が保有する固定資産は、貸付けをしていても少額減価償却資産の特例で減価償却をすることができます。
なお、少額減価償却資産の特例は白色申告をしている個人事業主は利用できませんので、注意しましょう。
3.短期前払費用の特例を活用し、前倒しで経費に
原則、前払費用はいったん資産に計上して役務の提供を受けた分だけ経費にできます。しかし、「短期前払費用の特例」は、前払費用で特定の条件を満たす場合、資産に計上をせずに支払い時に必要経費にしてもよいという特例です。つまり、条件を満たして、この特例を利用すると収益と対応させずに経費にできるのです。
例えば、2022年7月に1年分(2022年7月から2023年6月分)の保険料を支払った場合を考えてみましょう。
2022年1月~12月の確定申告では7月~12月の6か月分の保険料のみ経費にでき、2023年1月から2023年6月分までは前払費用として資産として計上するというのが原則です。
「短期前払費用の特例」が利用できると、2022年7月に支払った保険料の全額を経費にできます。「短期前払費用の特例」が利用できる条件は次の通りです。
短期前払費用の特例を利用する条件
- 支払った日から1年以内に役務の提供を受ける
- 実際に費用を事業年度末までに支払っている
- 継続して役務の提供を受けること
- 継続して同じように経理処理をすること
4.経費にできる税金を知っておく
税金の中には経費に計上できるものがあります。個人事業主に関係する税金で経費に計上できるものは次の通りです。
経費にできる税金
- 印紙税
- 個人事業税
- 固定資産税
- 自動車税
- 登録免許税
これらの税金は「租税公課(そぜいこうか)」という勘定科目を使って経費に計上します。自動車をプライベートと事業で兼用している時には、先にご紹介した「家事按分」の考え方で、事業で使っている分だけ経費にしましょう。
5.経営セーフティ共済の掛け金を経費に&万が一に備える
経営セーフティ共済は、取引先が倒産したときに無担保・無保証人で掛け金の最大10倍の借り入れができ、掛け金は、800万円を積み立て上限に支払った年に経費に計上できます。
掛け金は月額5,000円~20万円で、解約時には解約手当金が受け取れます。ただし40カ月未満での解約の場合には掛け金の額を下回って返還されるので注意しましょう。また、解約手当金は受取り時に雑収入として所得税がかかるので、利益の繰延である点にも注意が必要です。
赤字の年度に解約するとほとんど課税されないこともあり節税効果が見込めます。万が一の事態に備えたい、という個人事業主の方は検討してみると良いでしょう。
個人事業主の節税の裏ワザ 控除編
この章では、個人事業主が利用できる「控除」についてまとめています。節税額が大きな裏ワザもあるので、検討してみてください。
6.所得控除を受ける
先ほど紹介したこちらの計算式を見ると、所得控除が大きいほど課税所得が減るので節税になることがわかります。
個人事業主が納める税金の金額の計算方法
- 1.収入-経費-青色申告特別控除=所得
- 2.所得-所得控除=課税所得
- 3.課税所得×所得税率-控除額=所得税額
- 4.納税額-税額控除=納付額
使える所得控除は漏れなく申告して節税につなげてくださいね。
7.小規模企業共済に加入する
小規模企業共済とは、個人事業主や小規模な企業の経営者が退職金を積み立てることができる制度で、国の機関である中小機構が運営しています。
小規模企業共済の掛け金は月額1,000円~70,000円で設定でき、最大で年間84万円の掛け金の全額が小規模企業共済等掛金控除として、所得控除ができるので節税につながります。
退職・廃業時に掛け金に応じた共済金を受け取ることができ、一括受取りなら退職金扱い、分割受け取りなら公的年金等の雑所得の扱いになることから、受取り時にも税制上のメリットがあります。
個人事業主の方で老後に備えて貯蓄をしておきたい人は、節税しながら退職金を積み立てられるのでおすすめです。ただし、会社員と個人事業主を兼業している人は加入できませんので注意してください。
8.青色申告をする
青色申告をすると、最大65万円の青色申告特別控除ができて節税になります。課税所得が最大65万円減るので節税額も大きいですね。
青色申告特別控除が適用されるには条件があり、満たした要件によって特別控除額が、最大65万円、最大55万円、最大10万円となります。
青色申告特別控除の要件
- 最大65万円:②控除額55万円の要件%2Be-Taxによる電子申告または、優良な電子帳簿保存
- 最大55万円:事業所得であること、複式簿記で記帳し貸借対照表と損益計算書を添付、期日内申告であること
- 控除額10万円:所得税の青色申告承認申請書を提出していて、その年に青色申告が受けられること。上記65万円控除、55万円控除の要件を満たさない場合は10万円控除。簡易簿記でOK。
複式簿記が難しそう・・・という方は「やよいの青色申告 オンライン」などの会計ソフトを使えば、日々の取引を入力するだけで自動的に帳簿を作成してくれるから楽です。e-Taxにも対応しているので、最大65万円の特別控除が適用できます。初年度は無料で使えるので、試しに使ってみては。
また、青色申告をすると青色申告特別控除のほかにもこんな節税メリットがあります。
青色申告の節税メリット
- 赤字を3年繰り越せる
- 家族の給与を経費にできる
- 少額減価償却資産の特例を受けられる
個人事業をはじめたばかりのうちは、赤字になってしまうことも珍しくありません。
例えば、1年目は200万円の赤字、2年目は100万円の黒字、3年目は200万円の黒字だった場合を考えてみます。
1年目は赤字なので、所得税は0円。2年目は100万円-200万円=▲100万円で、2年目も所得は0円となり所得税は0円。3年目は2年目に相殺しきれなかった赤字分100万円があるので、200万円-100万円=100万円で、この100万円にだけ所得税がかかります。
また、青色申告では生計を一にする配偶者や親族を「青色事業専従者」として届け出ることで、手伝ってもらったお給料を経費にできます。
白色申告でも専従者控除があり、生計を共にする配偶者で86万円、親族で50万円の上限があります。青色申告ならこのような上限はありません。
青色申告をするには、以下の2つの書類を提出する必要があります。
青色申告をするために必要な手続き
「所得税の青色申告承認申請書」を、申告を希望する年の3月15日もしくは開業届を出してから2か月以内に提出
確定申告をするには、白色申告であっても簡易簿記での帳簿付けは必要です。手間は、簡易簿記で適用ができる青色申告特別控除10万円の場合とそれほど変わりません。さらに「やよいの青色申告 オンライン」などの申告ソフトを使えば、簿記の知識がなくても、かんたんに取引入力ができて、自動的に複式簿記で帳簿を作成してくれます。個人事業主の方は、節税メリットの大きい青色申告にぜひチャレンジしてみてくださいね。
9.iDeCo(確定拠出年金)で年金を積み立てる
iDeCo(確定拠出年金)とは、60歳以降に受け取る年金を自分で毎月掛け金を積み立てて運用する制度。掛け金の全額が所得税控除になり、毎年の運用益も非課税です。
個人事業主は最大月額68,000円、年間81.6万円の所得控除が受けられるので節税メリットも大きいです。
iDeCoの注意点は次の2つです。
個人事業主がiDeCoに加入するときの注意点>
- リスクのある金融商品に掛け金を投資するので元本割れのリスクがある(ただし、基本的に取るコスト平均法による投資となるので、リスクは少ないと考えられています)
- 掛け金は基本的に60歳まで引き出せない
個人事業主は厚生年金には加入できないので、会社員と比較すると将来受け取れる年金の額が少なくなります。
iDeCoを利用することで節税しながら年金を積み立てておくことで将来に備えられるので、個人事業主で手元資金に余裕のある人はメリットの大きい節税の裏ワザです。
10.ふるさと納税をする
ふるさと納税は、自己負担額2,000円を除いた寄付金額について、寄附金控除として所得控除と住民税の控除が受けられる制度です。
厳密に言えば、ふるさと納税は支払う税金の金額が少なくなるわけではありませんが、お米や肉などの「返礼品」がもらえることから、住民税を通常通り納めるよりもお得だと言えます。
確定申告を行う個人事業主は、ふるさと納税の確定申告を省略できる「ワンストップ制度」の利用ができないので、申告の際には忘れないようにしましょう。