銀行が不動産購入を勧めるのは、信用があるからという勘違い

Advertisement

今回のテーマは、「銀行が不動産購入を勧めるのは、信用があるからという勘違い」です。

銀行が不動産購入を勧める「本音」

全てではないものの、多くの場合、銀行員はその会社のために物件を紹介するわけではありません。
多くの場合は銀行が不良債権を抱えており、不良債権の担保として土地建物を差し押さえ、その差し押さえた不動産を売却し、不良債権を回収するのが支店長や銀行員の役割です。

そのための一番良い方法は、比較的優良な会社にその土地と建物を買ってもらうことです。
そうすると支店長や銀行の営業マンは「よく不良債権を回収した」「よく優良会社にお金を貸し付けた」と二重に評価されます。

銀行はあなたの会社のために親切に不動産を紹介するのではなく、自分の成績のため、銀行のために物件を持ってくるケースが多いのです。
銀行の言う通りに不動産を買い、その後資金的に困るケースを私は多々見てきました。

不動産を買ってもいい会社と買ってはいけない会社

全ての会社が不動産を買ってはいけないのではありません。
不動産を買っていい会社と、不動産をできるだけ持たない方が良い会社があります。

例えばメーカーの場合でしたら、工場が必要であるため、土地・建物を持たざるを得ません。
工場ですと都市より地方の方が適しており、土地代は安いです。

借入金も返済期間を15年や20年にしてもらうことがポイントです。
土地は償却できませんが、建物は工場で大体は24、5年の減価償却です。

一方、例えば卸売業などで倉庫を持つ業者の場合は、比較的都市の近郊の立地が求められ、土地代が高くなります。
中小企業の卸売業には特徴があります。

例えば中国やベトナムから規格どおりに作ってもらった商品を輸入し、国内で販売するビジネスの場合は、基本的に不動産を買ってはいけません。
そういう会社の場合は、売掛金と受取手形、棚卸資産が多く、そして買掛金が少ないという特徴があります。
極論、支払いは前渡金で、回収は受け取り手形、その間に在庫という関係になっています。

※輸入商品の販売をしている場合、仕入れ代金を先に払う必要があるため、支払手形や買掛金の額は小さく、一方で売上債権が現金になるまで時間を要するため、多額の運転資金が必要です。

実は経営者と銀行で「運転資金」の定義が異なります。
一般の経営者は、運転資金は事業活動に必要な全ての資金、設備資金以外は賞与の支払いや税金の支払いも含め、全て運転資金と見ますが、一方銀行は下記の式のように運転資金を見ています。
この運転資金を銀行は短期で貸そうとし、それほど返済を求めません。

運転資金=売上債権(受取手形と売掛金)+棚卸資産-仕入債務(支払手形と買掛金)

売上が立ってから現金になるまでの期間を「回収サイト」と呼び、仕入れから実際に支払うまでの期間を「支払いサイト」と呼びます。
そして、回収サイトより支払いサイトが短いことを「サイト負け」と言います。
サイト負けをしていると、P/Lでは黒字でも、B/Sを見ると現金が減少しています。

海外から輸入する業者の場合、支払いが早く、前渡金を支払う必要があります。
つまり買掛金が少なく、多額の支払いが早く発生する「支払いサイト」が短い状態です。

一方、販売先は国内であるため、売掛金や受取手形、在庫が多く、現金になるまでに時間がかかる「回収サイト」が長い状態となります。
そのため、会社が大きくなればなるほど、運転資金が膨らんでしまいます。
運転資金の大きな会社は、一般的に短期借入金で調達していますが、運転資金が膨らむほどトータルとしての借入金の枠がどんどん少なくなります。

以上から、海外で品物を製造し、輸入して国内で販売している会社は、運転資金が大きいため、相当自己資本比率が高く、資金が貯まってからでないと、自社ビルや倉庫などの不動産を持つべきではありません。

事業が成長する時に、資金需要はほとんどが運転資金です。
そのような時期に自社ビルを作ってしまったら、そこに長期的な資金を投入せざるを得なく、その返済が必要になり、資金の調達の範囲を狭くすることがあります。

Top Stories